目をあければ見える視覚世界。それはいつでも誰にでも手に入る、ごくありふれたものに思える。しかし、このありふれたものが、実は自然が生み出しだ驚異なのだとしたら。
その驚異を実感させてくれるのが赤ちゃんという存在だ。赤ちゃんはもともと動きも形も奥行きもない世界に生まれ、少しづつその世界を獲得していく。その1つ1つの過程は、丁寧に設計され実験を通じてはじめて、しかしはっきりと、感じることができる。動いているとはどういうことか。形とは何なのか。あるいは奥行きのない世界とはどのような世界なのか。こうした問いの答えを、モニターを見つめる赤ちゃんの眼の奥に想像してみる。それはとてもエキサイティングな作業だ。
このわくわくする感じをできるだけ多くの人々に伝えたい。 特に、動き、形、奥行き、などなどについて、普段からあれこれと考えている専門家の方々だけにではなく、世界を見つめる赤ちゃんのまなざしを、日々の暮らしの中で毎日のように見つづけている、お父さん、お母さん、おばあちゃん、おじいちゃん、といった人たちに。
そのために私たちは、1つ1つの実験をできるだけ丁寧に行い、あるときは論文に、またあるときは本の形にし、皆さんに私たちが感じたものをお伝えする。このHPもそうした伝達の助けになるのではと思い、研究室のメンバーみんなと協力し作成した。赤ちゃん世界がどのようなものであるのか、その不思議さについて考えること。あるいは、もしみなさんが、お父さん、お母さん、おばあちゃん、おじいちゃん、になったときに、赤ちゃんの視覚世界について考えるきっかけになること。このHPが、そのきっかけになることを願っている。